新橋・末げん

 
欅坂46長濱ねるがグループからの卒業を発表
最近は体調不良で一部テレビ出演を見送っていた。
関係者は「病気やトラブル」などを否定するも
「アイドル活動に悩んでいた」との見方を示す。
 
さて、新橋の老舗鳥鍋「末げん」である。
おなじみの江戸文化研究会の例会である。
壁一枚で駅前の通りの喧騒が嘘のような
落着きと格式にあふれる座敷に陣取った。
 

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創業明治42年というから今年で110年
大正10年この地に間口9間の大店を構え
戦争で建物を失うが後にすぐ復興を果たし
長く新橋駅前のシンボル的な存在であった。
 
やがて平成9年に創業から88年を迎えて
間口9間の黒塀の店にいよいよ別れを告げ
しかもその建材の一部を再び利用しながら
ビルとして上に伸びる形で今の店になった。
 
お通し
一品めはささみともやし
次はトコブシとささみ明太
 

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お造り
鳥と鯛で彩りもよく
鶏鍋への序章を奏でる
 

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三島由紀夫が最後の晩餐に選んだ店である
昭和45年11月25日自衛隊市谷駐屯地
決起を促す演説ののち三島は割腹自殺する
その前の晩彼らは「末げん」で鶏鍋を食べた。
 
元々三島の父が「末げん」を贔屓にしており
由紀夫も詰襟の小学生の頃からよく訪れていた
あの晩の4日前にも妻と一緒に来ていたとか
三代目の店主の丸哲夫さんが後に語っている。
 
水郷赤鶏のお鍋
水郷赤鶏は主に千葉茨城で育つ褐色の鶏
ケージではなく地面に放す「平飼い」で
コクと旨みたっぷりの柔らかい肉になる
ももとむねとハツレバー砂肝合鴨つみれ
 

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お鍋は鶏ガラのお出汁である
 

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1杯めはももとつみれと砂肝を
大根おろしと山椒とお醤油で
よそう順番も味付けも決まり
 

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つみれは埼玉・幸手の合鴨と千葉の地養鶏
茨城・奥久慈の軍鶏の3種を混ぜ合わせて
昼はこれを使い珍しい挽肉の親子丼を出す
 
主人は三島事件の年5月に結婚したばかり
新婚の若女将武子さんは初代店主に促され
その晩初めて三島由紀夫に挨拶に向かった
武子さんが語る宴席の様子は今も生々しく
 
楯の会の方が背筋をピンと伸ばして正座して
先生はじっと目を瞑って考え事でもしていて
部屋全体が何かものすごく張り詰めた空気で
結局ご挨拶もできなくてすぐ引き返しました。
 
さて2杯めはむねとレバーと合鴨
ポン酢ともみじおろしでいただく
豆腐のように柔らかいむねに驚く
 

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3杯めに再びももとついにハツが
味つけはどちらかお好みのほうで
昔はポン酢でいただくことはなく
由紀夫も3杯とも醤油味で食べた
 

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しめは出汁のしみたお雑炊
デザートは果物でさっぱり
 

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さて例の晩の若女将の回想の続きであるが
帰り際に玄関で靴紐を結ばれている先生に
ぜひまたお越しくださいとご挨拶をすると
先生は「えっ」と私のほうを見上げられて
 
「なにをまた来いなどと言われてもなあ
しかしこんなに綺麗な女将がいるのなら
あの世からでもまた来てみようか」と。
 
女将の話の真偽はもう確かめようもない。
 
末げん
03-3591-6214