品川・中金

ビックカメラ有楽町店に謎のピアノマン
周囲の喧騒をよそに超絶技巧を披露する
ホームレス風の男性が話題になっている。


男性は77歳の作曲家真野和男さん。
自宅にピアノはなく家電量販店を渡り歩く。
売り場の電子ピアノで作曲や録音をこなし
時には接客して売り上げに貢献することも!


さて、北品川の船宿「中金」である。
江戸文化研究会恒例の宴会である。
前回の約束どおりに初夏の舟遊び。


京急北品川駅」は実は品川駅の南にある。
江戸時代に「品川」と呼ばれていた地域は
おそらく今よりもっと南にあったのだろう。


駅を降りてしばらく歩くと潮の香りがする。
体に感じる風が冷たくなったら水辺は近い。
橋の向こうに「中金」の看板が見えて来る。



橋の両側に釣り船や屋形船が係留されている。
かつては目黒川に流れ込む運河だったという。
途中でせき止められて今はつながっていない。
水際に来るといつも地形の来歴を考えてしまう。



振り向けば品川駅の高層ビル群との好対照。
北品川橋は手前と奥それぞれの東京に臨む。
空間的には歩いて10分しか離れていない。
その同じ空間にふたつの時間が流れている。



番組の懇親会で貸切りで乗ったことがある。
その時は30人くらいでとても窮屈だった。
今日は私たち4人と、もう一組も4人の客。
一艘に8人は舟遊びと呼ぶにふさわしい贅沢。



水面が近く思った以上のスピード感に興奮。
天王洲アイルを右に過ごし広い運河に出る。
左折して首都高速1号線に沿って北上する。
やがて東京湾に出ると一気に視界が広がる。


軒先の提灯ごしにレインボーブリッジを仰ぐ。
薄暮の空の深い蒼色が提灯と並んで際立つ。
ガラスに映ったカラオケのテレビが少し残念。



前菜
屋形船の料理は天ぷらと相場が決まっている。
最初に前菜とお刺身、最後にご飯とフルーツ。



いただいている間にお台場の静かな湾に入る。
船のエンジンを切りしばらくそこに滞留する。
天ぷらを揚げ始めるのもこのタイミングだ。
その間屋上のデッキで夜風を感じながら飲む。


東の空が暮れてお台場の夜景が浮かび上がる。
その夜景に競って屋形船のイルミネーション。
花火大会の日はこのあたりが屋形船でうまる。



西の空にはまだ少し陽の名残りがある。
屋形船とレインボーブリッジと紫色の空。
広い空と暗い海をいつまでも見ている。



30分位したところでスタッフに呼ばれる。
「天ぷらが揚がりますのでどうぞ・・。」
現実に引き戻され階下の雑音が耳に入る。


エビと穴子
肝心の天ぷらの写真がボケている。



キス
昔から東京湾の名物である。



メゴチとイカ
メゴチも天ぷら向きの白身



サツマイモとシシトウ
野菜も美味しくいただく。
天ぷらの写真は結局どれも同じ。



天ぷらを食べ終わる頃船がまた動き出す。
東京湾に戻りレインボーブリッジをくぐる。
さらに築地の市場を左に見ながら勝鬨橋へ。
焼酎片手に爽快な夜のクルージングである。



時間によって隅田川をどこまで上がるか。
今日は勝鬨橋を越えてすぐUターンした。
東京湾をすべるように再び品川を目指す。


川辺に高層マンションが多いことに気づき
東京湾の夜景を独り占めする楽しさを想う。
それもこんなに多いと思うと逆に腹が立つ。


穴子ちまき
シメは穴子ちまき
景色を見るのに忙しい。



江戸文化研究会は宴会の腹ごなしに
食後の街歩きをいつも楽しんでいた。
品川からお台場経由で築地の先まで
今日は1年分をクリアーした気分だ。


昭和43年の写真が店に誇らしげに飾られる。
この辺りは昔はどこも釣り船屋だったらしい。
「真ん中にいる少年が今の社長です」とある。
昭和43年に5、6歳だとすると私と同世代だ。



船代を含めてひとり10,500円。
8人で貸しきればとても安く感じる。
「5月6月は実は穴場なんですよ。」
社長が帰り際にこっそり教えてくれた。
中金
03−3471−4531