青山・シェ・ピエール再々訪

練炭自殺と思ったら他殺だった。
次々と明るみに出る連続不審死。
詐欺容疑で逮捕の女との接点は。
ワイドショーを席巻する怪事件。


さて、青山のフレンチ「シェ・ピエール」である。
近いうちにと思いながらもう2年経っていた。
金曜の夜でもあり店の方は変わらぬ賑わい。



千代田線の乃木坂駅でもあまり使わない出口。
日本学術会議青山葬儀所などがあるあたり。
「青デニ」や洋菓子「ウェスト」の並びになる。


このマニアックな場所に1973年開店した。
フランス人による日本初のフレンチだと言う。
いつも陽気で気さくなピエールさんがその人。
今日も一流の饒舌な台詞でお客を迎え入れる。


ビール
「フレンチですけどドイツビールはいかが。
のどごしスッキリで選ぶ人は多いです。」
さりげなくすすめられるとついたのんでしまう。
クローネンブルグはパテやサラミによく合う。



サラダ
フレッシュな野菜たち。
産地をたずねてみると
「山梨、長野、群馬など
アスパラガスはペルー産
いろいろな所から集めます。」



家具や調度品もフランスから持ち込んだ。
食材も多くはフランスから週2回空輸する。
金曜日は空輸のある日なので狙い目なのだ。


「魚はスズキ、尾長鯛、ドーバーのヒラメ
 まだ少し動いているオマール海老・・。
 肉は牛、豚、鳥、鳩はピジョン、ウズラ。
 豚肉はコトブキと呼ばれる特別な豚です。
 子羊はホントのラム。マトンではないよ。
 鹿や猪は残念ながらまだこれからですね。」


調理前の食材をテーブルまで持って来て
ピエールさんの立て板に水のような説明。
赤坂の和食の「古母里」のおやじみたい。


白ワイン
「1本目は白ワインで」
「どんなものがお好み」
「スッキリ辛口が好き」
「ご予算は?
 スペシャルか普通か?」
「普通でお願いします!」


この会話からナントのムスカデ。
ロワールのナントで栽培される。
さわやかな辛口の代表的品種。



宗教史に興味のある方はお気づきだろうが
ナントは「ナントの勅令」のナントである。


16世紀フランスでカトリックプロテスタント
深刻な宗教対立をこの宣言により終結させた。
宗教の自由はフランス国家安定の基盤になり
17世紀の大きな繁栄へと繋がることになる。


やがて17世紀末ナントの勅令が廃止され
カトリック国家に逆戻りして再び衰退が始まる。
後のフランス革命にもつながる大事な伏線。
世界史を選択した受験生はおぼえておこう。


ムール貝
「今日はまだムール貝が届かない。
7時頃になるけどいいですか。」
今日フランスから来たムール貝
食事中に届いたものをいただく。
生放送みたいでなんだか興奮する。



モンサンミッシェルムール貝
船が寄り付かない浅瀬の海で育つ。
風味も豊かに味わいも深く濃く。
まだ時期が早いのか少し小ぶり。


赤ワイン
「赤ワインはどうしましょう」
「どのメインにも合うように
 飲みやすい赤をお願いします。」
「普通で?」
「普通で!」


この会話からシャトー・ペナン。
サンテミリオンの対岸でとれる
最近はやりのボルドーらしい赤。
安定感とバランスの良さで知られる。



ウズラ
メインはウズラを選択。
モモのローストだと思ったら
中がくりぬかれて詰め物が。



ウズラの壷抜きというらしい。
フォアグラ、黒米、キノコなど。
説明は完全に端折られていた。
濃厚なソースと絡んでうまい。


デザート
レモンのカステラと
アプリコットのシャーベット。
普段食べもしないデザート
フレンチだとなぜか食べてしまう。



金曜日に新しい食材が入ると
おそらく知っている客ばかり。
3人で5万円は少し贅沢だが
金額以上の満足感が得られる。


ピエールさんも開店以来36年
毎日あれだけしゃべっているのに
日本語はなかなかうまくならない。
シェ・ピエール
03−3475−1400