浅草・駒形どぜう

ロンドン市内の暴動や略奪が止まらない。
背景に若者層の閉塞感があると言われる。
ソーシャルメディアの影響も捨て置けない。
中東や北アフリカの市民革命にとどまらない。


さて、浅草の老舗「駒形どぜう」である。
「創業210年」と看板も誇らしげだ。
久しぶりの江戸文化研究会の例会。
初夏の予定がここまでのびのびに。


都営浅草線の浅草駅から地上に出る。
空が広く見えるのは川が近いせいか。
暗くなる前に駒形橋のたもとまで歩く。
対岸の風景はちょっとした宇宙基地だ。



浅草では「飯田屋」と双璧をなすが
歴史も規模も駒形が少しだけ上回る。
平日の夕方6時過ぎに店前で待つ人。
予約なしでふらりと行くのも楽しい。



本館と新館3階建てに260余席を有し
大広間に個室に座敷に椅子席もある。
こちらは帰り際に撮った1階の大広間。
お品書きがなければ道場のような佇まい。



骨せんべい
どぜうの骨せんぺいは
ビールとの相性が抜群。



さらしくじら
今日はクジラの日だそうで
お品書きより2割引きだと。
尾びれの脂肪とゼラチン質を
冷水にさらして酢味噌で食う。



どぜうなべ
養殖の栄養価たっぷりのどぜう。
数えたら一人前のなべに16尾。
「山」は山椒「七」は七味唐辛子。
ゴボウは有料ネギはお代わり自由。



浅草寺の参詣ルートにある絶好の立地。
折からの御開帳で開業時から繁盛した。
「江戸名物酒飯手引草」にも載ったとか。
江戸時代の「ミシュラン」のようなものか。


文化3年(1806年)の大火で類焼した。
「どぢやう」の四文字では縁起が悪いと
「どぜう」としたのは初代の発案らしい。
この看板がまた評判となり客が集まった。


どぜう丸ごと煮込んで「まる」と言う。
背開きにして頭と骨を取ると「抜き」。
小骨や頭が気になる人にはそちらを。
それを卵でとじると「柳川鍋」となる。



ゴボウとネギをたっぷりぶっかけて
炭火でじっくり煮込まれるまで待つ。
野菜がひたひたになるとまたうまい。
なくなると次の一人前が補充される。



酒は伏見の銘酒「ふり袖」を供する。
飲み口は甘くのどごしは辛いという。
焼酎はないのでビールの後は日本酒。
下町にはまだまだそんな飯屋が多い。



床の間にふり袖のマグナムボトルが。
一斗(一升の10倍)はあろうかと。
横に文庫本を並べて表現したつもり。
普通に一升ビンを並べれば良かった。



余談だが横の文庫本は「与話情浮名横櫛」。
「よはなさけうきなのよこぐし」と読むらしい。
「切られ与三」で知られる歌舞伎の世話物。
サッと出てくるあたりさすが江戸文化研だ。



夏はうなぎも良いがどぜうもおすすめ。
たんぱく質はうなぎとほぼ同じくらい。
ビタミンB2、D、鉄分はうなぎより多い。
カルシウムはうなぎの10倍に達するとか。


「体を暖め生気を増し酒をさまし痔を直し
さらに強精あり」と昔の本にあるそうだ。
「まる」をバクバク食って活力がみなぎる。
一人前1,750円でこの猛暑も乗り切ろう。
駒形どぜう
03−3482−4001