広尾・レヴェランス

サッカー元日本代表松田直樹さんの死去。
各界から早すぎる死を悼む声が上がった。
サッカーの神様はなんてことをするのか。
心からご冥福をお祈りいたします。合掌。


さて、広尾のフレンチ「レヴェランス」である。
天現寺の交差点からお寺に沿って路地を左に。
このあたり地元なので路地の奥まで詳しい。
広尾はお寺と商店街が同居する古い街だった。


今や「ペーパームーン」に「天現寺カフェ」。
お寺も建て替わり新しい街並みに変わった。
そんなビカビカの街の真新しいビルの1階に
清新な演出で魅せる「レヴェランス」がある。



新しく真っ白な店内は気持ちがいい。
テーブルが余裕を持って並べられる。
ふと見回すと他の客はまだ来ていない。
広い店を貸し切り気分でスタートする。


弾ける小さなサラダのプレリュード
フォアグラとサラダ
そこに砂糖と重曹が。
口の中でパチパチ弾ける。
目と舌と耳で楽しい前菜。



土つきホワイトアスパラガス
キノコのフレークを土に見立て
皿の上のホワイトアスパラガスは
森のハッティフナット(ニョロニョロ)
ムーミンに出てくる奇妙な生き物。



アンティチョークとレタス
森の香り豊かなエマルジョン。
ニョロニョロの話し声が聞こえ
やがて料理は一つの物語になる。


サザエと帆立
サザエのテリーヌと帆立のソース
帆立は泡のようで形をとどめない
海のフォルマとデフォルマシオン
形のあるものと形を失い行くもの


せっかくそんな物語を聞いたのに
現場ではメモを取るのに精一杯で
なんとこれだけ写真を撮り忘れた!


オーナーソムリエの亀山さんは本格派。
パリの三つ星「ピエール・ガニェール」で
長く研鑽を積んだ後ここに店を開いた。
ワインにも料理にも食材にも詳しい。


タイトルは亀山さんがつけるとか。
ロマンチックでメッセージがある。
説明したくてテーブルの脇に控える。
ちょっと質問すると丁寧だが長くなる。


魔性のサラダ
仔鳩と豚耳と牛の胃とタコの足。
食感の良い代表選手が集まった。
少しずつだがそれがまた癖になる。
魔性のサラダのタイトルそのままに。



金目鯛のクルティザンヌ
付け合わせにトマトとオリーブ
ルッコラ、パンチェッタ、セロリ、
赤ピーマン、タマネギ、きゅうり
そしてもたれかかるおかひじき。



クルティザンヌは高級娼婦。
モテモテのクルティザンヌ。


穴子と茄子のタブレット
穴子の下にキャビアオーベルジーヌ
豚足のコラーゲン入りパートフィロ
ブラッドオレンジのソースも鮮やかに
15立方センチの宇宙に閉じ込められる。



野山の散策濃茶の一服
ケベック産シャロレー種の仔牛のロティ
芽キャベツとズッキーニを少し添えて
キャベツのピューレと抹茶のソースで
ひと山越えねば仔牛にたどり着かない。



説明が終わってもテーブルの脇に立っている。
やがてこちらの話に少しずつ入ってくる。
料理の説明を通したコミュニケーション。
フレンチへの深く強い愛情がにじみ出る。


伊藤章良さんが面白いことを書いている。
フレンチ通を気取る人こそ連れて行きたい。
手加減しない亀山さんと本気の勝負になる。
たまには緊張感みなぎる食事も楽しいかも。


コーヒーと紅茶
デザートの前にお茶をどうぞ。
別メニューとお茶っぱのワゴン。



コーヒー4種紅茶9種
ハーブティーが7種類。
やにわに解説が始まる。
いきなり言われても選べない。


ミクソロジー2011カフェノワゼット
グラスの中味は黒糖のフランマンジェ
そこにキャラメルソースを加えたもの。
上にはクッキーの生地とローストした
クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ。



コーヒー風味のアングレーズソースを加え
スプーンの背で砕きすべて混ぜていただく。
「カフェノワゼット」とはクルミ色のカフェの意。
森羅万象が溶け込んだ深くて濃いクルミ色。



マルガリータ
ライムのパルフェと塩のメレンゲ
テキーラのシャーベットを添えて
あたかもマルガリータのように。



サブタイトルは「パルフェ・タムール」
「私の愛したパルフェ」と「完全なる愛」
ひとつの言葉にふたつの意味を乗せて。


またたく間にコースを平らげてしまった。
亀山さんのお話もあってダブルで満腹だ。
3時間の滞在中結局他の客は来なかった。
ついて来る人がいないのかと心配になる。
レヴェランス
03−5475−3290