日本橋・ふくべ

オウム真理教元幹部平田信逮捕から10日。
陰で支えていた斎藤明美容疑者が出頭した。
転居のたび名前を変えたという偽りの16年。
警視庁は二人の潜伏先の家宅捜索を開始した。


さて、日本橋の老舗居酒屋ふくべである。
東京駅八重洲口と日本橋のちょうど中間。
大きな区画のオフィスビルが建ち並ぶ中
一角だけ小さな飲食店がごちゃっと集まる。


しかも同じような造りの店ばかりである。
小路に迷い込みぐるり一周してしまった。
時間が止まったような昔ながらの横丁の
実は一番目立つ場所に「ふくべ」はあった。



間口一間の扉の向こうはカウンター席。
映画にも出てきそうな昭和の居酒屋だ。
右側の別の間にテーブル席がいくつか。
キャパはおよそ40人ほどと意外に広い。


刺身3点盛
飾らず奇を衒わず正統を旨とする。
マグロぶつとイカ刺しとタコ刺し。



板わさ
何もたさないし何もひかない。
これって案外むずかしいのでは。



カウンターに鎮座した菊正宗の樽酒。
ほのかな樽の香りを熱燗で堪能する。
酒は日本全国のものが飲めるという。
各地のナショナルブランドがそろう。


「ふくべから湧いて出る酒金の色」
カウンター奥の暖簾に書かれた句だ。
「ふくべ」とはどうやら「瓢箪」のこと。
酒器としての「瓢箪」が店名の由来か。


くさやの干物
干物が名物とかであじかます
とどめにくさやの干物をいただく。
においはそれほどでもないと思う。



フェースブックで再会した大学の同級生と
(と言っても彼は私より5つも年上だが)
今日は学生時代以来という歴史的酒席だ。
神田の出版社勤務ならさぞ詳しかろうと
店のセレクトをまかせたら大正解だった。


同級生は当時から本ばかり読んでいた。
やがて出版社に勤めたのは天職だろう。
楢山節考からヴィトゲンシュタインまで
30年経った今夜も本の話ばかりしている。


はんぺん焼き
なお典型的な居酒屋メニューが続く。
はっきり言って味は普通だと思うが。



しめ鯖
昭和14年酒屋から居酒屋に転じた。
普通も70年続ければやはりすごい。



居酒屋の達人風の「おひとりさま」も多い。
「おひとりさま」どうしの相席も普通である。
テーブルだけを共有して空間は共有しない。
ひとりで静かに飲んで帰る究極の大人飲み。


山かけ
何を注文しても想像どおりのもの。
注文で失敗することはないわけだ。



玉子焼き
最後もきれいな玉子焼きでしめる。
ほかにしらすおろしと海鮮サラダ。



日本酒を相当飲んだので覚えていないが
割り勘ならひとり3000円でお釣りがくる。
大学の同級生と30年前を懐かしむ酒席。
その間も店の佇まいは何も変わっていない。
ふくべ
03−3271−6065