根岸・笹乃雪

「コピペ疑惑」や「再現実験失敗相次ぐ」など
疑問が噴出する小保方さんの「STAP細胞」。
さらに自身の論文からの転用が指摘される。
理研は「調査結果がでるまで答えられない」と。


さて、根岸の豆富料理店「笹乃雪」である。
江戸文化研究会の半年ぶりの例会である。
創業元禄四年というから今から320年前。
江戸文化研究会の主旨にピッタリの老舗だ。



2階建ての店にはいくつもの個室がある。
赤い絨毯が敷き詰められた廊下や階段。
靴を脱いでふかふかの感触なぞを楽しむ。
長旅で旅館に着いた時のような解放感だ。



前菜・生盛膾(白酢和え)
お野菜やらこんにゃくやら
牛乳かんのようなものやら
白い豆富に和えていただく。
「豆腐」でなく「豆富」が笹乃雪流。



冷奴
全ての基本となる絹ごし豆富
店の地下で作られているとか。
大豆の強い甘みを感じながら
もっちりとした食感を楽しむ。



上野の宮様のお供で京都から江戸へ移り
根岸に豆富茶屋を開いたのが始まりとか。
「笹の上に積もりし雪の如き美しさよ」との
宮様の賞賛の台詞が店名の由来となる。


寛永寺は年号を名前に冠する由緒正しき寺。
山号も「東の叡山」の意味で東叡山と称す。
住職は3代以降15代まで皇族方が勤めた。
「上野の宮様」と呼ばれるのはそのためだ。


あんかけ豆富
少しの辛子があんの甘さを引き立てる。
上野の宮様がそのあまりの美味しさに
「今後二碗ずつ持ってくるように」と言って
以来お客様に同じものを二碗ずつ供する。



胡麻豆富・揚げ物
香り高い柚子味噌が良くあう。
揚げ物も別の趣向で楽しめる。



季節の一品(ちり蒸し豆富
松山産の鯛と鳴門のワカメに
豆富も一切れ入っているのだ。
茶碗蒸しの中の豆富のような
不思議な感触だがうまかった。



正岡子規が暮らした「子規庵」も近い。
ネオン煌く鶯谷のラブホテル街の先に。
当時はどんな景色が続いていたのだろう。
子規にも笹乃雪を歌った句が少なくない。


蕣に朝商ひす笹の雪
(あさがおに あさあきなひす ささのゆき)
               明治三十年
            
水無月や根岸涼しき笹の雪
(みなづきや ねぎしすずしき ささのゆき)
              明治二十六年


飛龍頭(がんもどき)・雲水(湯葉巻き豆乳蒸し)
関西ではがんもどきのことを飛龍頭という。
語源はポルトガル語の「フィリョース」と聞く。
小麦粉と卵をまぜ油で揚げたお菓子だとか。
がんもどきの何ががんに似ているかも謎だ。



うずみ豆富(お茶漬け)
上のそぼろ風のものが豆富
わさびでサラッといただく。



豆富アイスクリーム
甘くないアイスクリームに
梅ジャムがよくマッチする。



根岸ゆかりの文人・墨客の書や絵画が
店の中にたくさん誇らしげに飾ってある。
隣の団体さんがあちこちで写真を撮る。
料理屋と言うよりちょっとした観光地だ。



店も料理も仲居さんのうんちくまでも
320年かけて良く熟成されている。
美味しくて手ごろでしかも健康的で
豆富だけでお腹いっぱいになった夜。


笹乃雪
03−3873−1145