青山・シェ・ピエール

上田桃子の調子がいい。
米女子ゴルフツアー開幕戦の第2日、
スコアを5つ伸ばして通算6アンダー。
ソレンスタムらに続き暫定3位に浮上した。
最終日に強気のゴルフがどこまで通じるか。


さて、青山の老舗のフレンチ「シェ・ピエール」
昨年7月以来、およそ半年ぶりの再訪である。
フランス人による最初のフランス料理店として
1973年に、青山葬儀所の前にオープンした。



気取らない家庭的な雰囲気の店で入りやすい。
ロフトに通じる小さな階段の下の席に通され、
そこへ、店主のピエールが挨拶にやってきた。


「今日のみなさんはとてもラッキーです。
フランスには『階段の下には幸運がある。』
と言うことわざがあるのです。」
もっともらしく流暢な日本語でそう言った。


食材は毎日フランスから空輸する。
その中に、週に1回金曜日にしか
お目にかかれない貴重な食材がある。
ムール貝だ。


ムール貝


モン・サン・ミッシェルムール貝
海の中に聳え立つ岩と修道院の奇観。
あの、世界遺産モン・サン・ミッシェルだ。
潮の満ち引きの差はヨーロッパで最も大きく、
そのため広い湾内に一切船が入ることがない。



何にも荒らされない海で育ったムール貝
身がしまってフランスで一番うまいらしい。
一口食べれば、その違いは誰にでもわかる。
こんなプリプリしたムール貝は初めてだ。
かなりの量だがアッと言うにたいらげた。


ワインはブルゴーニュの赤をリクエスト。
肉にも魚にも合うように、
軽めのピノ・ノワールを選んでくれた。



きのこのサラダ


「きのこだけだとちょっと寂しいですね。
ホワイトアスパラはまだないのですか?」
「3月くらいにならないと入りませんね。」
「代わりにオマール海老を合わせたら?
きのことオマール海老、合いませんか?」
「きのこも美味しいし、オマール海老も美味しいから、
きっと美味しいでしょう。問題ない。」とピエール。


ちょっとした会話から出来たオリジナルメニュー、
きのことオマール海老のサラダ。
それぞれの味わいがしっかり残る逸品になった。



ピエールの解説はわかりやすく説得力がある。
美味しいものを食べるだけでも十分楽しいが、
その情報を理解しながら食べるともっと楽しい。


すべての食材はまずテーブルに運ばれて、
ピエールの解説を聞きながら選んでゆく。
メインディッシュの説明も流れるようだ。


「肉は鴨、うずら、鹿、猪のこども、ウリ坊ね。
そして牛肉はほほ肉、テールの赤ワイン煮込み。
魚はオマール海老、まだちょっと動いている!
尾長鯛、かさご、そしてドーバーの舌平目・・。」


前回、次は「ドーバーの舌平目」と決めていた。
ジビエはあと2週間、その後は美味しくない。」
と言うピエールの話には大いに迷わされたが
いろいろ考えた結果、初志貫徹。


先輩のひとりは、牛のほほ肉を選んだ。
「右のほほと、左のほほどちら?」とピエール。
「えっ?」と思わず答えにつまる先輩。


「正解は左のほほ。牛の舌なめずりはいつも左のほほ。
左のほほばかりなめているから、左が美味しくなるの。
今度、牛をご覧になる機会があったら注意して見てね。」
初めは冗談かと思ったが、どうやら本当の話らしい。


舌平目のムニエル


ドーバー海峡の舌平目である。
激流に耐えた体は、しなやかに引きしまる。



日本でいつも食べているムニエルのように、
ホロホロとくずれてくることがない。
切り分けても形を残し、歯ごたえもある。
これを蒸すともっと差が出る、とピエール。


いやな脂っこさも、しつこい味付けもない。
ムニエルのようにしっかりと調理されても、
食材の旨みをそのまま楽しむことができる。


チーズ


色々な種類から選ぶことが出来る。
くさい物好きの私が選んだのは・・。
手前は熟成した柔らかい山羊のチーズ。
奥は青カビの代表格、ロックフォール



パンとワインがいくらでも入る。
食後にチーズを食べる理由は
前回ピエールが明解に説明してくれた。
要するに残ったパンを食べつくすため。
和食で言えばご飯と漬物の関係である。


デザート


キャラメルとホワイトムースと
チョコレートムースの三層のケーキ。



今日の私たちはなんと、男ばかり4人。
でも他のテーブルも変わった客が多い。
若者、老夫婦、女3人連れ、男4人連れ。
ただ一様に身なりに気を使っている人々。


フレンチに詳しい今日のスポンサーは
色々な店を食べ歩いた結果、
銀座の「ペリニオン」と、ここの2軒に
集中するようになったとか。


久しぶりに食べ物のことだけで
記事を書ききった。
フレンチのうんちくは奥が深い。
コースは7000円から。
シェ・ピエール
03−3475−1400