人形町・松浪

「NEWS23」岸井成格氏降板の報道
昨日の古館伊知郎氏の会見に続いて。
放送と政治的公平の問題にゆれた一年
どうしたって背景を推測してしまうのだ。


さて、人形町お好み焼き「松浪」である。
明治座で観劇のあとたまたま見つけた店は
関東風のさっぱりしたお好み焼きを供する。
甘酒横丁から程近い、路地裏のこの佇まい。



昭和26年の創業以来60年の歴史ながら
江戸文化研究会例会にもじゅうぶんな老舗感。
暖簾の裏に隠れるような表札を見つけた。
偶然にも私と同姓で他人のような気がしない。



そのまま人が住めそうな畳敷きの広間に
5、6台の鉄板焼きの卓が無造作に並ぶ。
ふすまを隔て4畳半ほどの個室があるが
そこも畳敷きであることに変わりはない。



追加はいくらでもできるということなので
ここは一番下のコースに身をゆだねてみる。


ホタテ
トップバッターは豊満なホタテちゃん。


まず鉄板にバターをしいて食材をのせ


頃合で醤油か塩こしょうで味付けする。


「今だ」と思い切って醤油をかける瞬間
ジュワッとはじける音と香りに唾が出る。
「これでごはん三杯いけるね」とか言って
食材が変わるたびにただこれをくり返す。


生しいたけ
こちらもたいへん立派なしいたけ


やがて焼き色がつきしんなりとなる。
ギュッと噛むほどに旨みが染み出す。


日本酒
オリジナルの日本酒は
その名も「松浪の酒」。



イカバター
寒天のような白が乳白色に変わる。


イカが熱い!と身を反らしたら食べ頃。


お好み焼きの予備知識を確認しながら。
大きく分けると関西風と広島風がある。
関西では生地に具材をまぜ一緒に焼く。
広島では生地と具材を別に焼き重ねる。


東京では一般的に関西風にまぜて焼く
名古屋ではなぜか広島風に分けて焼く。


牛バター焼き
牛肉や鶏肉は変化がわかりやすい。
焼肉屋さんで見慣れているせいか。


とりバター焼き
ひと品ずつけっこうな分量があり
そこそこ腹いっぱいになってくる。


かき
これだけは追加しようと決めていた
築地でも非常に高い値がつくという
岩手県は広田湾産の大ぶりのかきは
小麦粉たっぷりでまるで大福のよう。


そのうち色が変わってひっくり返す
裏側も色が変わってまたひっくり返す。
とにかくそのくり返しなのである。


そしていよいよメインイベント
「松浪」の誇るお好み焼き三種。
お好み焼きや鉄板焼きに行くと
鍋奉行ならぬ鉄板奉行が現れる。


厚めに焼くとか薄めに焼くとか
ひっくり返すとかまだまだだとか
醤油や青のりはいつかけるかとか
人によって千差万別喧々諤々となる。


松浪焼き
松浪焼きの具材はあさりと長ネギ。
深川めしお好み焼きになったか。


豚肉やキャベツを見慣れていると
この絵柄はなかなかに独特である。


味つけはソースでなく醤油を使う。
品の良いさっぱりしたお好み焼き。


浪花焼き
浪花焼きは三つ葉とかまぼこと小柱
お好み焼きのイメージを打ち破る。


仕上げはやはり醤油がおすすめ
醤油の香りと青のりがよく合う。


芳町焼き
芳町焼きは牛そぼろとキャベツ。


こちらは普通にたっぷりソースで。


中味のギュッとつまったお好み焼き。


焼きそば
焼きそばでも鉄板奉行が大活躍
本人は職人になった気分である。


お店の人が焼いてくれれば確かに楽だけど
自分で全部やる楽しさもこれで捨てがたい。
醤油やソースをかける瞬間のジュワッと感と
鉄板をめぐるあーだこーだが醍醐味と知る。


一番下のコースはひとり3,000円である。
下町ということを勘案してもやはりこれは安い。


松浪
03−3666−7773