赤坂・金龍

フランス大統領選は23日に1回目の投票。
主要4候補が小差で激しく争う大混戦。
有権者の最大関心事は雇用対策と言われ
テロ事件を受け治安や移民問題も焦点に。


さて、赤坂の老舗和食「金龍」である。
みすじ通りにそびえ立つ黒塀の威容。
見た目のとおりかつては料亭であった。
8年前「赤坂金龍」として生まれ変わる。


黒塀の前には誰か客の到着を待つ人が立つ。
黒塗りがつけて降りる人を恭しく出迎える。
黒塗りが去るとまた別の誰かが来て人を待つ。
いつまでもその繰り返しで写真が撮りにくい。



いくつかの個室やカウンターを通り過ぎ
一番奥のちょっとした広間にたどり着く。
畳の上に4卓のテーブルと椅子が並んで
白いテーブルクロスに朱色の盆が鮮やか。


先付
胡桃豆腐
揚胡桃一粒


前菜
舞茸紅葉和え
秋刀魚肝焼き
蕪菁寿司
えのきゼリー寄せ
餅銀杏柚子味噌


1928年に初代女将秋葉よしが料亭を創業
戦後現在の赤坂みすじ通りに再建されたとか。
名匠吉田五十八の流れをくむ現代数寄屋建築。
以来八十年親子三代で赤坂の花柳界を支えた。


2009年「料亭金龍」から「赤坂金龍」へ
高かった敷居をはずし新業態で復活を果たす。
隣のテーブルでは外人を接待しているようだ。
赤ワインをがぶ飲みして実に楽しそうである。


お椀
百合根摺り流し
紅葉はんぺん


造り
鯛 鮪 蛸
山葵醤油


料亭や待合として発展した赤坂の花柳界
昭和の初めには芸妓400名を擁したという。
中でも明治時代の芸妓萬龍は美人の誉れ高く
「酒は正宗、芸者は萬龍」などと歌われた。


やがて価値観が変わって接待文化は鳴りを潜め
隆盛を極めた料亭も芸妓も減少の一途をたどる。
最新の情報では赤坂に料亭6軒芸妓は10人とか。
私も赤坂勤務33年で一度も足を踏み入れていない。


焼物
秋鮭親子焼き


煮物
子持鮎有馬煮
里芋含ませ
恵比寿南瓜塩蒸し


油物
鴨蓮根辛子揚げ
大黒しめじ


ここへ来て高級料亭「口悦」が閉店するという。
食べログ」を運営するカカクコムが買ったとか。
食べログ」が「口悦」を買収とはなんたる皮肉。
赤坂の料亭はとうとう残り5軒ということになる。


「歴代の首相で訪れたことがない人はいない」ほど
政治家や官僚、財界人が蝟集する屈指の料亭であった。
「口が悦ぶように」名付け親は映画監督の小津安二郎
女将は東大卒の人気俳優故・渡辺文雄の妻純子さんだ。


食事
栗御飯
赤出汁
香の物


果物
季節のフルーツ


「ミカド」「コパ・カバーナ」「ラテンクォーター」
TBSも開業し赤坂にはさまざまな娯楽が栄えた。
石原裕次郎が歌い力道山が飲み田中角栄が遊ぶ街。
昭和の後期赤坂は明けることを知らない街だった。


やがて平成になって赤坂の街は脂が抜けたようで
焼肉屋と韓国クラブだけはしぶとく残っているが
うまいメシやうまい酒を求め赤坂を出る事が多い。
これは社業にも影響があるという気がしてならない。


赤坂金龍
03−3583−2033