両国・ぼうず志ゃも

朝日新聞のスクープ記事に端を発して
職員の自殺や国税庁長官の辞任などと
益々泥沼の様相を呈してきた森友問題。
次週を待てとまるでテレビドラマのよう。


さて、両国の軍鶏鍋「ぼうず志ゃも」である。
今年初めての江戸文化研究会の例会である。
長年の研究の結果得られた傾向がふたつある。
江戸の老舗は両国に多くしかも鍋の店が多い。



両国橋から遥かスカイツリーを臨みながら
寒風吹きすさぶ中を西から東へと渡り行く。
「ももんじ家の裏手」などと言おうものなら
「向こうが裏でこっちが表」と叱られるとか。



回向院と道を挟んで閑静な一角にたたずむ
創業は天和年間というから300年の歴史。
船頭と相撲取りの間のけんかを引き取って
初代が頭を丸めて仲裁したのが店名の由来。


勘当された若旦那が船頭になって隅田川
落語の「船徳」に登場することで知られる。
歌舞伎「三人吉三」や漱石の「こころ」にも
鬼平犯科帳」の「五鉄」のモデルでもある。


お通し
鳥と玉ねぎ


レバ焼き
コリコリでなく柔らかくうまい


ささみ
トロッとうまい


軍鶏鍋
味つけは「秘伝の割り下と味噌とこころ」
八代目女将の三浦悦子さんの名言である。


「たらい」と言ったら女将が違うと言う。
では「おけ」と言ったらまた違うと言う。
正解は「飯台」で「はんだい」と読むべし
下からつくね、むね、もも、ねぎ、しらたき。


少し遅れて生卵を持ってくる女将さん
「たまごがエスケープしておりました。」
大河ドラマのナレーションも似合うほどの
低く落ち着いた声でたまに変なことを言う。


お銚子をもう一本追加するかと悩んでいると
義経にしておく?」とすかさず聞いてくる。
落語の「青菜」の一説を下敷きにしたトーク
老舗の女将は古典もしっかりおさえている。


秘伝の割下はさりげなく甘くコクがあり
部位ごとに微妙に違う軍鶏肉を味わえる。


昼間フジテレビの記者が店にやって来た
春日野部屋後援会だと近所で聞いたとか
暴行事件でワイドショーを騒がせていた頃
「誰が言ったのか調べなくちゃ」と真顔で。


親方は強面で鳴らした元関脇の栃乃和歌
成績が悪いと部屋までフラッと出かけて
「和歌ちゃん誰のせい?」を発破をかける。
弟子に厳しい親方も女将の前では形無しだ。


それでも帰り際には玄関で深々と頭を下げ
お客の姿が見えなくなるまで顔をあげない。
300年の老舗ならではの軍鶏鍋の楽しさと
粋な女将さんにまた会いに来たくなるお店。


ぼうず志ゃも
03−3631−7224