江古田・やっちゃん再訪

誰も予想しなかったカメルーン戦の勝利で
ワールドカップの熱がにわかに燃え上がる。
ムードに流されやすい国ニッポンの真骨頂。
もうオランダに負けることなど考えられない。


さて、江古田の肉の「やっちゃん」である。
はじめは取締役を連れて行く予定だったが
直前にスケジュールNGになってしまった。
でもバラすのが惜しくてメンツを組み直した。


大江戸線新江古田駅から歩いておよそ20分。
その距離感がかえってありがたみを増すのか。
梅雨の入りの強い雨に濡れながら一心に歩く。
店の明かりがあたかも砂漠のオアシスのよう。



例によってテーブルもカウンターも超満員。
私たちの3席分だけポッカリと空いている。
「やっちゃん」の客は明るくて声がデカい。
店に来たことを心の底から楽しんでいる。


刺身盛り合わせ
刮目して見よ。
この色と光沢を。



前回よりもさらに品数が多い。
前列はもも肉のバリエーション。
一番手前が抜群にうまいハラミ。


レバとロースの生ハムとガツ刺し。
普通のセンマイと究極のセンマイ。
白くてコリコリの究極のセンマイ。
普通のセンマイよりずっとかたい。


ベーコン
オヤジは「本物のベーコン」と呼ぶ。
普通のベーコンとは決定的に違う。
厚めに切って食感と肉汁を楽しむ。



牛ロース焼き
ロースなのにカルビ並の脂。
しかも柔らかくジューシー。
皿を出すときにオヤジが一言。
「こりゃあサーロインだな。」



店の中は声のデカい人が優位だ。
「カウンターの注文とったのか!!」
客の嬌声に割って入るオヤジの声。
それをさらにかき消す客の笑い声。


忙しすぎて催促するのも申し訳ない。
生ビールが出るまで15分かかった。
肉の種類など質問するのも憚られたが
聞けばうれしそうに教えてくれるのだ。


煮込み
ミノやハチノスがたっぷりと。
ネギと豆腐がバランスをとる。
汁まで完食必至の名物煮込み。



串焼き
串焼きも豊富にある。
コメカミとナンコツ。
歯ごたえと肉の旨み。
口の中に幸せが広がる。



口蹄疫問題はどうですか。」
オヤジにちょっと水を向けてみた。
「栃木とか茨城に来たらヤバい。
牛も豚も終わっちゃうよね。」


狂牛病の全頭検査にも疑問を呈す。
何を調べていたか怪しいものだと。
「今回もまだよくわからないよね。」
オヤジなりに動向に注目している。


とにかく牛肉のことしか頭にない。
牛肉を愛し牛肉をリスペクトする。
その愛情がすべての料理に表れる。
そんなオヤジを客がリスペクトする。


牛タン焼
塩コショウでサッと焼く。
そのまま口にほおばると
牛タン独特の肉の味わい。



つくね塩
前回タレでいただいた。
塩でつくねが前に出る。
ハンバーグと差別化するには
こちらのほうがいいかも。



いつの間にか客が引けて静かになった。
時計の針はすでに10時を回っている。
最後に煮物の盛り合わせをと思ったら
「10時で閉店なんですけど」と奥さん。


ラストオーダーの声掛けもなかったし
ましてやお勘定を閉めるふうでもない。
どうしても納得できなくてねばったら
山盛りの3人前がドカンっと出てきた。
「あまったら包んで持って帰ってね」だと。


煮物盛り合わせ
タン、ハチノス、豚のテール。
ゴボウ、ニンジン、ジャガイモ、
コンニャク、まるごとニンニク。



カウンターに並んでいた煮物各種を
適当に見つくろって皿に盛って出す。
無造作でダイナミックな男の料理だ。


帰り際に次回の予約をする客も多い。
店のカレンダーに予約のメモを書く。
名前と人数と時間を黒い小さな字で。
ひと月先までビッシリとうまっている。


2週間先に今回流れたぶんを予約した。
なんだか常連になったようでいい気分。
ひとり6千円ほどでおサイフ的にもイケる。
「肉の神様が宿る店」と言われるだけに
たまにオヤジの顔を拝みたくなるのだ。
やっちゃん
03−3954−4997