四谷・桃太郎

マーリンズイチロー選手が依然好調だ。
メッツ戦の第4打席で今季1号を右翼へ。
41歳のホームランにスタンドも大興奮。
「泣きそうやね!」とイチロー選手も感激。


さて、荒木町の居酒屋「桃太郎」である。
野菜たっぷりの鍋で知られるこちらの老舗に
会社の先輩後輩が久々に5人顔をそろえた。
20年前にはよくよくこのメンバーで来ていた。


新宿通りのみずほ銀行から坂を下ってすぐ。
雰囲気のある暖簾と提灯が迎えてくれる。
無造作に丸められた葭簀張りは夏の備えか。
店内はテーブルと小上がりの20人で満席だ。



お通し
マカロニサラダと温泉たまご。
ややおざなりな感じのお通しは
気合の野菜鍋へのフリだと
前向きに考えることにする。



お刺身五点盛り
居酒屋でとりあえずの刺し盛りや
コースに組み込まれる刺し盛りに
批判的なご意見の方がたまにいる。
どこでも食べられるものなのにと。


でもこの刺し盛りは案外うまかった。
たまにそんなことがあるものだから
あるいは注文考えるのが面倒でつい。
「とりあえず刺身。盛り合わせで。」



江戸時代この辺りは松平摂津守のお屋敷。
滝と池の美しい庭園は新しい名所となり
やがて芸者の行き交う花街として栄えた。
路地のそこここに当時の風情が今も残る。


前の主人が4年前に亡くなり店を閉じた。
そのあとご近所の別の居酒屋の店主が
名前もメニューもそのまま復活させた。
血縁でも弟子でもない異色の二代目だ。


昔は主人の毛筆によるお品書があった。
今もそれは大事に保管されているとか。
それに比べると今のメニューは味気ない
桃太郎鍋3000円、コースは6000円。



野菜鍋
いよいよ本日のメインイベントである。
まずは牛ほほ肉の塊にごぼう、にんじん
大根、さらにきのこ関係が投入される。




鍋を待つ間にお出汁を一口いただく。
柚子の香りがやさしい味を引き立てる。



写真は山盛りのレタスにしか見えないが
サニーレタス、小松菜、にら、春菊、せり、
黄ニラ、チシャ、青梗菜、大葉、カイワレ
水菜までトータル20種類の具材が入る。



長く煮込まずにサッとお出汁にくぐらせる。
これが野菜のしゃぶしゃぶと言われる由縁。
思いのほか力強く滋味あふれる野菜の数々。
食べ終わると少しだけ健康になった気がする。



昔はここにつみれを入れた覚えがあるが
他のどこかと混同しているかも知れない。


小さくても品のある店が軒を連ねる。
荒木町と言うだけで良い店だとわかる。
風情のある横丁は神楽坂にも似ている。
どちらも花街に由来する所が共通点。


対照的に戦後の闇市から始まったのが
新宿思い出横丁や渋谷のんべい横丁だ。
店の品格や姿かたちにはこだわらない。
その代わり安くてうまいものを出すと。


シメは鍋に細めのうどんを入れるか
白飯にお出汁をかけてお茶漬け風に。




食べる順番やタイミングなど作法が多く
お客にあまり自由がないのは昔からだ。
そんな悪口を言い合える同じ仲間たちと
また同じ店に来られたら楽しいと思う。


にぎわう横丁を新宿通りまでそぞろ歩く。
路地を間違えると道に迷って抜けられない。
知らない店に誘われる危なっかしさもある。
でもそれを味わいたくてまた横丁を目指す。


桃太郎
03−3355−0385