大門・新亜飯店

Googleめぐり米中国間に波紋広がる。
当局の検閲やサイバー攻撃を懸念し
中国からの撤退をほのめかした問題。
中国政府は疑いを完全否定したという。


さて、芝大門の中華「新亜飯店」である。
音事協のパーティーに居合わせた人と
抜け出して軽く食事でもということになる。
とにかく宴会メシは落ち着かないのだ。


「新亜飯店で小龍包なんてどうですか?」
「今まったく同じ事を考えていました。」
そうと決まれば何にも手をつけず外へ。
増上寺三門を背に大門まで足早に歩く。


目指す新亜飯店は間口二間の細長いビル。
1階から5階まですべて店になっている。
この地に創業して36年経っているとか。



高級中華料理店がそのまま古くなった。
調度品や装飾に雰囲気を残しながらも
改良の意志などまったく感じられない。
そんな無頓着ぶりがかえって迫力になる。


間口は狭いが奥行きが広く1階で20人強。
それが5階まであるから少なくとも100人。
外で人が待つくらい混雑することもあるとか。
こんな場所なのに昔から業界関係もよく使う。


前菜三種
クラゲ、棒々鶏ピータン
三種の組合せは相談できる。
どれも塩味がややきついか。



店員は全員中国の皆様。
例によって愛想がない。
昔の筑紫楼を思い出す。
思い切って質問をした。


「おすすめとかありますか?」
「豆苗。」
(単語しか言わない。ですもますもない。)
「へぇー、豆苗。珍しいですね。」
(なんで客が気を使っているんだ?)
「豆苗をどんなふうにして食べるんですか?」
「塩炒め。」
(とてもすすめていると思えない。)


豆苗塩炒め
こちらは塩加減が適当。
結果的にはうまかった。
汁気を嫌う人もいるが
まったく気にならない。



小龍包
こちらが本日のメインイベント。
音事協のパーティーを抜けてでも
足を伸ばして食べに来る価値がある。



ひと包みがとても大きくて
「中龍包」とでも呼びたくなる。
皮はうすく肉汁はたっぷり。
どのテーブルでも例外なく
せいろを何枚も積み上げる。


ソフトシェルクラブ
同席の人の珍しい注文だ。
甘辛いタレをたっぷりと。
一口にほおばるとイケる。



妙に詳しいと思ったら
彼は祖父に連れられて
子供の頃から来ている。
新亜飯店歴30年だと。


「裏メニューっていうのがあるんです。」
「裏メニュー?」
「その日のうまいものはメニューにない。
 店員に聞かないと出てこないんです。」
(またあの店員に聞かないといけない・・)


「すいませんメニューにない
 おすすめなんてありますか?」
(はやくもへりくだってる)
「何食べたい?」
(裏メニューがいろいろあるのかっ)
「じゃ、肉料理でなにか」
「牛豚鶏?」
(そんなに何種類もあるのかっ)
「じゃ、豚肉で」
「豚肉とマコモ茸?」
(もはや断るはずもない)


豚肉とマコモ
シンナリした筍のような
マコモ茸の軽い歯ごたえと
やわらかい豚肉のバランス。
醤油でよく炒めた裏メニュー。



調子に乗ってもう一品。
「玉子料理でなにかありますか?」
(相変わらず気を使っている)
「玉子とキクラゲ?」
(でもぶっきらぼうには慣れてきた)


玉子とキクラゲ
確かに玉子とキクラゲ。
でも豚肉と筍も入っている。
味付けも醤油でさっきと同じ。



豚肉の裏メニューと玉子の裏メニュー。
リクエストに適確な返事はしてくれる。
でもかぶりを気にする細やかさはない。
36年やってこれならもう変わらない。


小龍包は絶賛されるが他は酷評も多い。
それで裏メニューという発想になるのか。
コストパフォーマンスの低さも言われる。
なにより接客に対する悪名はことのほか。


これだけ歴史があるのに未だに賛否両論。
でもそれが不思議な魅力だと私は思う。
ビールと紹興酒で3人で18,000円。
ご自身の目と耳と舌でお確かめください。
新亜飯店
03−3434−0005